こんにちは!溝の口店の大友です。

先日スコットランドの研修旅行に参加させていただきました。今回のお目当てはアイラ島にある『カリラ蒸留所』と『ラガヴーリン蒸留所』、それからジョニーウォーカーのビジターセンター『プリンセスストリート』で、どれも素晴らしい経験になりましたので、その内容をお伝えしたいと思います!

初上陸となったアイラ島は、スコットランド北西部にある離群島、ヘブリディーズ諸島の最南端にある島です。面積が600㎢と淡路島よりやや大きいものの、人口はわすが3500人ほど。人の手があまり入っておらず、自然をそのままに残しています。

アイラ島へはグラスゴー空港から飛行機で45分ほどかけて向かいます。天気が悪いと飛ばないことも多く、その場合はフェリーで行くそうです。幸いなことに、私たちが向かった日は快晴とは言わないまでも雨は降らなかったので、滞りなく飛行機で飛び立つことができました。島内では車で移動したのですが、アイラ島南部のアイラ空港から、島の中心地であるボウモアの街を通り、北東部にあるカリラまでも30分程度で到着し、島の小ささを実感しました。この小さな島に現在10ヶ所の蒸留所があり、その全てが世界中で知られていることに驚きます。

アイラ島の最大の特徴とも言えるのが、土地の約1/4が広大なピートの層で覆われていることです。ピートとは何かと言いますと、ヘザーやヒースといった野草や水生植物などが堆積、腐敗して炭化したもののことで、日本語では泥炭と呼び北海道でも採取できるようです。アイラ島のピートは海藻などの海産物が多く、そのピートで原料となる大麦麦芽を乾燥させることで、ヨード臭とも呼ばれる磯の香りが特徴的なウイスキーに仕上がります。好き嫌いの分かれるそのスモーキーさ、薬品臭いとも表される香りは、ウイスキーがお好きな方でしたら一度は試されたことがあるでしょう。

車で走っている間、見渡す限りが草原で殆ど建物などはありませんでした。広大なピートの層、人よりずっと多くの羊(食用となるそうです)、たまに牛が見えるばかりです。商業施設などもボウモアの街くらいにしかないようで、現地の若者は遊ぶ場所がなく苦労していると聞きました。ピートについては早ければ4月、大体5月から7月にかけてカットし、1週間ほど外に並べて乾燥させてから使います。元々島には石炭がなく、燃料として使われてきた歴史があります。

カリラ蒸留所
最初に向かったのがカリラ蒸留所です。蒸留所のすぐ真後ろには海が広がっており、そのアイラ海峡が名前の由来となっています。奥にはジュラ島が見え、その距離は1.6kmほど。地図で見ていた印象よりもずっと近いのだなと驚きました。

建物の中に入るとお土産コーナーがあり、カリラのデザインがあしらわれたパーカーや小物など惹かれる商品がたくさん置いてあります。蒸留所限定のカリラを含むディアジオ社が所有する他蒸留所のウイスキーも数多く並んでおり、ここで購入することができます。私は手詰めでボトリングできるカリラを購入し、初めてハンドフィルを経験しました。

それから蒸留所のツアーに参加しました。案内してくれたのは地元がアイラ島のニーフさん。2022年に熟成庫だった場所をツアー向けに改装したようで、最初に「フレーバージャーニー」というものを体験しました。

カリラを構成する『スモーキーな香り』『バーボン樽由来の甘い香り』『蒸留所周辺の海や木や草など空気の香り』『ナツメグ、生姜、シナモンなどのスパイスの香り』をそれぞれ4つの容器から感じ取るというものです。スモーク、スイート、シーエア、スパイスがカリラの4要素とのことです。

次のストーリールームではフィルムも用意されており、ジョニーウォーカーと絡めてカリラの歴史を知ることができます。今回ガイドとして同行してくださった田村さんの通訳を頼りに、

蒸留所ができて従業員のための村ができた。
蒸留所が拡張して船が発着できる場所ができた。
1870年代にそれまであった蒸留所を壊して拡張した。
1989年以前は原酒の9割がジョニーウォーカーに使われ、残り1割が他のブレンデッドに使われていたが、その後、花と動物シリーズでシングルモルトとしてリリースされるようになった。
ジョニーウォーカーはアイラモルトとしてはカリラをメインに、他にクライヌリッシュ、カードゥ、グレンキンチーがキーモルトとして使用されている、という説明を受けました。

次に製麦についての説明を受けます。

収穫→浸漬→発芽→乾燥→粉砕という順番で、大麦をウイスキーの原料として使える状態になるまで1週間ほどかかります。

カリラ蒸留所は1972年にフロアモルティングをやめており、現在はモルトスター(製麦専門業者)のポートエレン社からフェノール値34〜38ppmの麦芽を仕入れウイスキー作りを行っています。

外に出るとジョニーウォーカーのアイコンである、ストライディングマン(闊歩する紳士)の像がありました。カリラとクライヌリッシュ、カードゥ、グレンキンチーのそれぞれに立っており、カリラのストライディングマンはピートを掘るときの長靴、潮風のジャケット、蒸発するアルコールの帽子を身に付けています。

1972年からの建物に入ると、カリラ蒸留所の設備を目にすることができます。

1963年から使っているフォーサイス社製のモルトミル。これで乾燥させた大麦麦芽を粉砕します。

グリスト(粉砕した大麦麦芽)が13トン入るマッシュタン(糖化槽)。
お湯を3回に分けて入れつつ、6時間かけて糖分を抽出します。

8万リットルの麦汁が入る木桶とステンレス製のウォッシュバック(発酵槽)。
壁が黒くなってるのは1972年から使用しており、2025年に解体予定だそうです。
ここで酵母を加え、60時間かけて糖分をアルコールに変えることでアルコール度数8%のもろみを作ります。

時間をかけるほどトロピカルフルーツの香りに近づいていくそうで、逆に短いものはナッティーで香ばしい香りを感じることができました。

カリラの蒸留器。初留を行うウォッシュスチルと、再蒸留を行うスピリットスチルがあり、上部のアームがまっすぐなのがスピリットスチル。

蒸留器は約7メートルあり、首の部分が細くなってることで、環流が起きて酒質が軽くなると言います。

最後に熟成庫を見ることができました。
カリラで生産された原酒は全てグラスゴーにある熟成庫で寝かせるそうですが、他の蒸留所の原酒を含めいくらかストックされているようです。

ここではカリラ10年(リフィルアメリカンオークのバーボン樽)、カリラ12年(ヨーロピアンオークのSTRワイン樽)、カードゥ7年(ファーストフィルバーボン樽)、キャメロンブリッジ13年、試験的にチョコレートモルトを使用したティーニニック(ポートワインでシーズニングのバーボン樽で7年くらい)を試飲することができました。

一通り見学を終えた後は、アイラ海峡を眺めながらカリラのテイスティングをさせていただきました。普段飲むときよりも風味の輪郭がはっきりとし、潮風を詰め込んだような味わいに感じられます。まさしく絶景、絶品でした。

左からリフィルバーボン樽で寝かせた通常の12年、バーボン樽で熟成後にカリフォルニアの赤ワイン樽でフィニッシュした蒸留所限定ボトル、ファーストフィルのバーボン樽で寝かせたハンドフィルボトル。他にジョニーウォーカーのダブルブラックをレモネードで割ったカクテルもいただき、これがまた意外にも美味しかったと記憶しています。お店でもお作りいたしますので、気になる方は是非オーダーください!

ラガヴーリン蒸留所

ボウモアの街で昼食を済ませ次に向かったのがラガヴーリン蒸留所です。こちらではウェアハウス
テイスティングといって、熟成庫内での試飲を楽しむツアーに参加しました。

Tシャツ1枚でラガヴーリンの魅力を伝えてくれるガイドさん。熟成庫内はコートを着ていても寒いくらいの気温だったのですが、慣れるのでしょうか…。

バリンチといって大きなスポイトのようなもので、このように原酒を樽から吸い出します。私はやりませんでしたが、かなり肺活量が必要そうに見えました。この原酒を全員でテイスティングします。

従業員である金澤もチャレンジ。これだけでも酔いが回ってました。

試飲したのは5種類で、「通常フェノール値35ppmだが2024年のアイラフェス向けに60ppmで作られた10年熟成」「リフィルグレーン樽と、リフィルの何かの樽で寝かせた11年熟成」「ボルドーワイン樽12年熟成」「リフィルフィノシェリー樽熟成」「16年に使われている?シェリー樽熟成」のラガヴーリンです。

ただ、一つ注いだ後、説明が終わると同じテイスティンググラスに次の原酒を注がれるので、まあまあハイペースで飲まないと間に合いません。しかも全てカスクストレングス、度数も高いのです。ガイドさんは飲めない分は床に投げていいと仰ってたのですが、プライドが許さず全部飲み干して一気に酔っ払いました。笑

スコティッシュイングリッシュの癖があったそうで、通訳の田村さんも全て聞き取れず、原酒の情報は正確ではありません…。ただ16年にシェリー樽熟成の原酒が使われているとすると、これまでのシェリー樽原酒が使用されているか否かの論争に終止符が打たれることになりますね。

ちなみに、ラガヴーリンは16年のボトルだけ着色(カラメル)を使用する場合があるそうです。というのも、1983年、一番最初にリリースされた16年が着色されていたため、色を合わせるためにそうせざるを得ないとのこと。ラガヴーリンはそのフレーバー、16年のイメージに合わせて原酒を構成するため、あまりどの樽でという考え方はしてないそうです。

ジョニーウォーカー プリンセスストリート

翌日、飛行機でアイラ島からグラスゴー空港、グラスゴー空港からエジンバラ空港へと移動し、エジンバラ市内を観光後、最後の目玉となるジョニーウォーカー
プリンセスストリートへと向かいました。

ジョニーウォーカー

プリンセスストリートとは?それはジョニーウォーカーを所有するディアジオ社が、スコッチウイスキー観光への巨額な投資と共に、かつてデパートだった7階建てのビルを4年半の歳月をかけて改築し作り上げた、2021年9月にオープンしたばかりの没入型のビジターセンターです。

恥ずかしながら、私も研修に参加することが決まるまでは、あまりその存在を認識していませんでした。実際に訪れてみるとそれはもう驚きの連続で、フレーバーの旅と名付けられたツアーも非常に楽しむことができました。その内容について、お伝えしたいと思います。

ツアーが始まる前に、タブレットで質問に回答するよう促されます。内容はバナナが好きか?ココナッツが好きか?といったフレーバーに関する質問で、一つ一つ答えていくと最後にカラーを指定されるので、その色のリストバンドを身に付けます。これで自分の好みのフレーバーを持つジョニーウォーカーを選ぶわけです。私は”スパイシー”の診断を受け、オレンジ色のバンドを身に付けました。

次にエレベーターで3階へ移動すると(エレベーターの中もジョニーウォーカーブルー仕様だったのですが、撮り忘れました!)、小部屋で簡単な説明を受けます。「ウイスキーはストレートで飲まなければならない」というのは誤解である、といった内容です。部屋には非常に昔のボトルも展示されていました。

次に移動すると舞台が用意されており、そこで役者さんが小道具を用いながらジョニーウォーカーの物語を語り始めます。次々に入れ替わる映像と舞台装置、光と音の演出に引き込まれること間違いなしです。

創業者ジョン・ウォーカーをモチーフにした有名なポーズも見ることができます。

次の部屋ではハイボールを試飲することができました。棚には色分けされたホルダーのついたグラスが並んでおり、自分のリストバンドと同じ色のものを選びます。氷を入れてサーバーの下に置くと自動でハイボールが注がれました。

ホルダーに内蔵されたチップを読み取ることで、注ぎ分けられているみたいです。私が選んだ”スパイシー”のフレーバーは、ジョニーウォーカーの赤ラベルでした。それぞれのフレーバーに合わせたガーニッシュまで用意されています。

次の部屋ではウイスキーの製造工程や、ジョニーウォーカーを構成する4つのキーモルト(カリラ、クライヌリッシュ、カードゥ、グレンキンチー)について説明されます。ここでも小道具が使われ、光と音を駆使したユニークな演出を受けられました。

次の部屋ではフレーバーについての解説です。どのウイスキーによって、どんなフレーバーが構成されているのかを知る機会となりました。ジョニーウォーカーがラベルごとのキーモルトを謳うのではなく、そのボトルが持つフレーバーについて強調するようになったことからも、ディアジオ社が最も重視していることが分かります。

ツアーの最後も試飲できるスペースとなっており、ここではハイボールとオールドファッションドでそれぞれ6種類、計12種類のカクテルと、並べられた様々なジョニーウォーカーを1人2種類まで楽しむことができます。

一緒に行ったメンバーで、それぞれ回し飲みをしました。個人的にはクリーミーソーダとトロピカルオールドファッションドがユニークな味わいで気に入りました!ウイスキーの楽しみ方は人それぞれ、というのも今回のツアーの大事なコンセプトだったと思います。

一通りツアーを終えた後は、屋上階のレストランバーでユニークなカクテルと共に贅沢なディナーを楽しみました。スコットランドで頂いた料理は、若干バリエーションの幅が狭いものの、どれも大変美味しかったです。

さらに丁度私が誕生日を迎えるということもあって、ディアジオ社の関口さんからサプライズで”ジョニーウォーカー エクスペリエンス
ブレンド” なる限定品を飲ませていただくことに。度数が高くジョニーウォーカーとは思えないほどパワフル!それでいて甘さもしっかりとした、記憶に残る味わいでした。「28歳も更なる経験を積んでほしい」とのことで、今回の経験を糧に、更なる進化を遂げられるよう頑張ります!ありがとうございます!

こちらで今回のスコットランド研修旅行について、書き収めたいと思います。長くなってしまいましたが、最後までご覧いただきありがとうございました。また、今回の研修旅行に連れて行ってくださったディアジオ様、同行してくださった関口さんと田村さんにも、大変お世話になりました。本当に有意義な内容で、無事研修旅行を終えられたことを非常に嬉しく思います。日頃支えてくださっている皆様にも還元できますよう、この度の研修旅行を営業にも活かしていきたいと思います。本当にありがとうございました!

大友