「バーテンダーさんって休日は何をしているんですか?」
毎日のように聞かれるこの質問に、昔なら飲み歩いてますよ。や勉強も兼ねてBAR巡りです。などとサラッと答えていた。
けっして嘘ではないけれどどうにもしっくり来ないので最近はほどほどに趣味の話をする。
「カードゲームを。共通の趣味の仲間と集まってやっていますよ。」
昨今はスマホで簡単に娯楽が手に入り、ほとんどが無料!という時代に僕の趣味は大分アナログだ。
小学生のときからの趣味だが定期的にお金もかかり(カード1枚で軽自動車が買えるような物も!)、好きすぎるくらいでなければ続いていないと思う。
BARの仕事もそう考えたら大分アナログかもしれない。
今は飲みたいカクテルのボタンを押せば目の前でメイキングしてシェイクまでするマシーンがあるというのに、僕らはメニューを出さずに会話からオーダーを取り始めたりもする。
「スポーツでも良いのですが、同じルールの中で普段会わないような方々とゲームをするのはやっぱり楽しいですよ。会話をして、時には表情を読みながら。仲間には最近開業したお医者さんもいれば、エンジニアの方、俳優さんまで色んな方がいます。」
昔からのこの趣味は今の仕事にも少なからず良い影響を与えてくれている。
性別、職業などなど多種多様なお客様へより良い接客をするにはそれなりに戦えるだけの手札と、有効な牌を的確に切る戦術が必要だ。
しかも手札を増やすには知識や経験を積まなければならないし、より良い戦術を打ち出すには流れを読むことや魅せ方を覚えることも必要でカードゲームと違ってお金を出せばとりあえず戦えるというわけではない。
過去に働いていた店の上司には、お前は沢山のいい手札を持っているのに切り方が下手すぎてお客さんが満足するまでいかないんだよと叱られた事がある。
いま考えてみれば随分歩み寄った言い回しをしてくれている良い方だった。
「ここまでBARの接客とカードゲームが似ているとして色々例えてみたのですが・・・。
一番違っていて一番意識しないといけないことは、接客では勝敗を決めるのが最も大切というわけではなく、”またこいつとゲームをしたい!”と思ってもらうのが大切という点じゃないでしょうか?」
来年で業界10年目。さらに自分の”手札”と”戦術”を増やして、お客様に”またこいつに接客されたい!”と思ってもらえるバーテンダーを目指して。
たまプラーザ店バーテンダー 武