だけど、ここでは、一番素敵な自分でいられるのです。誰にもどこにも属さない一人の人間に戻れるのですから。
私が時代屋が好きなのはそんなところです。だから、普段は遠い店まで素顔で買い物にでかけるくせに、近所の時代屋へ行くときはちゃんとお化粧して、イイ女を目指してみるのです。日中の会社員の自分は忘れ、家の中での妻や母親の自分は忘れて、一人の女にも戻って、出来たら恋のひとつでもかたってみたいと思うのです。
だけど、うれしいかな悲しいかな隣の椅子にはいつも、かつての恋人、今の夫が座っているのです。