会社の研修旅行で海外に行けるなんて、最初は他人事のようで実感が湧きませんでした。

憧れの国、ウイスキーの聖地スコットランドは、心地よい寒さと、見渡す限りの荒野と、美しい街並みが同居する国でした。

車内から見える羊の数々、ウールとハギス(羊の内臓料理)になる運命を知らない可愛らしい白い塊が、景色の至る所に点在していました。

街中の建物は全て石造りで200~300年前に建てられたものが、今も普通に使われているという建築技術の高さ。道脇に添えられた、戦死者を追悼する赤いヒナゲシの花とリメンバランスサンデーの歴史・・・

全てが新鮮でした。

メインであるウィスキーの蒸留所見学では、作っている人たちが大きかった事が特に印象的でした。

ロッホナガー、カーデュ、グレンオードと、どの蒸留所も案内してくれた人たちは皆、大きな体をのっしのっしと揺らし歩いていました。蒸留所でウィスキーを作っているのはほとんどが生粋のスコットランド人、ハイランド地方で生まれ育ったスコットランド人は大柄な人が多数を占めるそうです(睡眠時間が長く、イモを良く食べるからとか)。

ロッホナガーでは、巨人の様な人たちが巨大なマッシュタン(糖化をする機械)と戦っていました。ガシガシと豪快に仕事をする彼らからは想像もつかないほど、蒸留所はとってもエコ。

糖化に使ったモロミは近くの農家へ運び家畜の餌に。蒸留後のウィスキーの余熱はエネルギーの再利用としてマッシュタンの熱へ。ティスティングで残ったウィスキーも持ち帰り用の小瓶に詰めれる、最後の一滴まで楽しんで下さいという無駄の無い徹底ぶり。恐らく何年もかけて今日の形になったであろう洗練されたその設備とスタイルに、歴史の深さとスコットランド人の本質を見ました。

しばしケチだと皮肉られてしまうスコットランド人ですが、それは厳しい自然環境の中で生きる彼らが身につけた、無駄をなくした洗練されたスタイルなのだと気付かされました。風力や潮力を利用して生きる彼らは、エネルギーを再利用することに長けた文化を持つ事で知られています。

蒸留所も例外ではありません、自然と共存しているからこそ無駄を出さない、人間本来のあるべき姿を垣間見せてくれました。

『もったいない』という日本語が、スコットランドでも取り上げられているそうです。『無駄にしない』という意味を持つ、スコットランド人たちの考えによく似た素晴らしい言葉であると。ときに卑しく見えたり、ケチな考え方と捉えられてしまうのかもしれませんが、今一度、自分も見直してみたいと思います『もったいない』という言葉。

スコットランド研修の後から一つの口癖が出来ました。
今では1日に一度は口にする様になりました。

『ビニール袋いりません』 と。笑

令和元年12月 筒井