「海外と日本ではこんなに流行りが違うのか!!」
昨年の12月に2018クラシックカクテルワールドセラーが発表された。
1位は2017から引き続き”オールドファッションド”、2位も続いて”ネグローニ”と相変わらずの人気ぶりで全世界での”強くて甘くて少し苦い”ブームはいまだ健在だった。
3位から10位まではほとんどラインナップは変わらずに順位が入れ替わったくらいで、マティーニやマルガリータなどが名を連ねている。
ところ変わって日本バーテンダー協会(N.B.A)が発表した昨年の日本カクテルランキングではロング部門で1位から”ジントニック”、”モスコミュール”、”ジンリッキー”。ショート部門では”ギムレット”、”マティーニ”、”サイドカー”とまだまだ辛口カクテルブームが続いているようだった。
「オーセンティックバーのメインになる客層は主に40から60代と言われていて、ミクソロジーや旬のフレッシュフルーツ系などの”はいから”なカクテルはよく解らないから挑戦しないという方も多く、マティーニ1杯が美味しくないバーテンダーが新しい物ばかり勉強するのはおかしいと仰るお客様も少なくありません。だからこそクラシックは何度も練習します。」
そんな中で海外のBARでは当たり前だったシグネチャーカクテルという単語が、少しずつ日本でも聞くようになった。
BARTIMESのサイト内記事”シグネチャーカクテルって何?”では、BARやバーマンを代表するカクテル、シグネチャー(=署名)となる1杯の事、とある。
料理の業界でいうスペシャリテのような物だろう。
「我らが時代屋たまプラーザ店では”究極のブラッディメアリー”と”至高のソルティドッグ”がシグネチャーカクテルに該当するのではないでしょうか?どちらもミクソロジーの枠ですが、常連さんからも初めての方からも毎日のようにオーダーされます。」
では、僕のシグネチャーカクテルは何だろうか?
何年か前にふらっと来店された同業者さんにそれを聞かれたとき、まだそういうのを考えるレベルではないのでなどとお茶を濁したのを覚えている。
得意なカクテルがないわけではない。
しかし、自己を主張するようなカクテルを必要と思ったことがなかった。
月日が流れて当店でもドリンクを触れる人間が5人に増えた頃。
完全におまかせでと常連さんに言われたときのみ作るカクテルが出来た。
名前はジャズの名盤から。
自分の最も好きなリキュールであるシャルトリューズ・ヴェールを使いシェイクする。
この淡い緑の”テイクファイブ”は、プライベートでも頼む1杯で、自分で作る時には通常レシピには入らないビターズや塩などを少々加え飲みやすく仕上げている。
「でもこのカクテルの1番に素晴らしい点は、好きなジャズの曲名という事でも好きなリキュールを使っている事でも味が良いという事でもないんです。TAKE FIVEの綴りには、僕の名字が入っているんですよ。」
ウイスキーやビールしか飲まないぞという方々も、たまにはカクテルナイトでBARを楽しんでみてはいかがでしょうか?
たまプラーザ店バーテンダー・武