過ぎ去っていく月日の早さを飛ぶ矢に例えた諺。よく使われる表現でもあり、聞き馴染みのある方も多いでしょう。由来は定かになっていませんが、最も古いもので、日本では平安時代の初めに作られた古今和歌集にも似たような表現があります。
『梓弓 春たちしより 年月の いるがごとくも 思ほゆるかな(弓矢を放つように時は早く過ぎる)』
過ぎる時間の早さを表現した言葉は海外にもあって、英語では
“Time flies like an arrow”
「時間は矢のように飛ぶ」
フランス語では
“Le temps file comme le vent”
「時間は風のように過ぎる」
スペイン語では
“El tiempo se escapa como agua entre los dedos”
「時間は指の間からこぼれる水のように逃げる」
ドイツ語では
“Die Zeit rinnt wie Sand durch die Finger”
「時間は指の間を通り抜ける砂のように流れる」
なんて言うそうです。
「ああ、こんなにも早く時は流れてしまうんだな」という思いは、古今東西あらゆる人に共通する感覚なのでしょう。
私が時代屋に入社して、今年でもう丸7年を迎えます。新型コロナウイルスが流行してから4年、溝の口店に異動してきて3年、店長を務めて2年、あっという間でした。仕事もプライベートも打ちのめされた絶望のあの日からも、もうすぐ2年経つのかと思うと、深い悲しみを癒してくれる時の偉大さを実感します。
さて、今回はその時間にまつわる雑学を4つほどご紹介させていただきます。
1.「危険を感じたときにスローモーションに見える」は本当
よく事故の瞬間や自分の身に危険が迫ったときに、時間の流れがゆっくりになったという話を聞きますが、これは錯覚などではなく実際に起こる現象です。
これを「タキサイキア現象」といい、「感情によって時間の進み方に変動が生じる」ということが、実験でも明らかになっています。
人は恐怖だけではなく、怒りや驚きなど、感情が喚起されると、視覚が短時間に処理できる能力(時間精度)が上がります。
スポーツ選手が高い集中力のもと「ゾーン」と呼ばれる状態に入り、非常に高いパフォーマンスを発揮することについても、感情や内発的注意によって視覚情報処理のスピードが上昇し、時間的精度が高くなるからと考えられています。
2.速度や重力によって時間の進み方が違う
これは物理的に時間の進み方が変わるというもので、アインシュタインの相対性理論に基づく現象です。Time Dilation(時間の遅れ)と呼ばれます。特殊相対性理論による時間の遅れと一般相対性理論による時間の遅れの2種類あり、以下のように説明されます。
特殊相対性理論による時間の遅れ:光速に近い速度で移動する物体にとって、時間は遅く進むという現象です。例えば、光速に近い速度で宇宙を旅する宇宙飛行士は、地球にいる人よりも遅く年を取ることになります。この現象は「双子のパラドックス」として有名です。双子の一方が高速で宇宙旅行をし、もう一方が地球に残ると、帰還後には宇宙旅行をした双子の方が若いままという結果になります。
一般相対性理論による時間の遅れ:強い重力場では、時間が遅く進むという現象です。例えば、地球の重力圏よりも強い重力を持つ天体の近くでは、時間が遅く進みます。この現象により、地球の重力圏外で動くGPS衛星は、地上よりも時間が早く進みます。GPS衛星の信号を正確に受信するには、この時間のズレを補正する必要があるのです。
時間の流れは普遍的なもののように思えますが、実際には主観的にも物理的にもズレが発生するものなんですね。
3.クロノタイプは遺伝子によって決まっている
クロノタイプとは、いわゆる「朝型」「夜型」というやつで、個人の生物学的なリズムに基づいた、最も活動的な時間帯を示す特性のことです。3つに分類され、
「朝型」早寝早起き・早朝に活動的・夜になると眠くなる
「夜型」遅寝遅起き・夜遅くに活動的・朝は起きるのが苦手
「中間型」朝型と夜型の中間・どちらの時間帯も対応しやすい・生活リズムが比較的柔軟
といった特徴があります。これらは年齢ごとに変化があるものの、遺伝的な要因によって大きく左右され、個人の努力で変えることは難しいとされています。
自分のクロノタイプと社会的なスケジュールが合わない状態を「社会的ジェットラグ」と呼びます。これにより、慢性的な疲労や健康問題が生じることがあります。
4.ジャネーの法則
こちらは聞いたことある方も多いのではないでしょうか。ジャネーの法則は、時間の主観的な流れが年齢に比例して早くなるという心理学的な理論です。具体的には、1歳児にとっての1年は人生の全てであるのに対し、50歳の人にとっての1年は人生の1/50に過ぎないため、年齢を重ねるごとに1年が短く感じられるというものです。
この理論は体感的にも納得できますよね。小学1年生の時は、「これが6年もあるのかよ、クッソなげーな」と思っていましたが、それよりも明らかに今の6年間は短く思います。ジャネーの法則によると、80歳まで生きるとして、体感は20歳が折り返し地点になるとか…。
ただ、心理的背景として、歳を重ねるごとに記憶の密度が低くなる、というのも時間の流れが早く感じる理由の一つだそうです。若い頃は新しい経験や学びが多く、それに伴う記憶の密度が高いです。このため、時間がゆっくりと感じられる傾向にあります。一方、年齢を重ねると新しい経験が減り、日常のルーチンが増えるため、記憶の密度が低くなり、気付けば1年経っていた、ということになりがちです。裏を返せば、日々新しい経験や知識を得ていくことで、体感時間を長くすることができるのです。
いかがでしたか?このように、時間にまつわる様々な理論や現象を知ることで、私たちの生活や時間に対する見方が少し変わるかもしれません。時間は誰にとっても限られた貴重な資源です。日々の中でどのように時間を過ごすか、どのように新しい経験を積み重ねていくかを意識することで、より豊かで充実した生活を送ることができるでしょう。時間の流れを感じることで、日常の些細な瞬間も大切にできるようになるはずです。ただ、時にはダラダラと過ごす休日も、悪くはないですよね?私はそんな時間も大好きです!笑
最後までご覧いただきありがとうございました。
それでは、また皆様のご来店をお待ちしております。
大友