時代屋の中国人スタッフ2号機、水上(みなかみ)です。
この度、時代屋に所属して9ヶ月目になり、初の研修旅行に行ってまいりました。
というのも先月の話で、タイムリーではなくなりましたが、ここ一ヶ月の時間を使って熟成したお話にお付き合いいただければと思います。

行きと帰りは先日先輩たちがあげたブログ通りで、割愛いたします。
テレポーテーションで静岡駅に到着した、あの午後から始まります。

空は雲ひとつもなく晴れ、水上は在日六年も経って、日本でまともに外国人観光客をしてこなかったな~と気付き、外国人観光客が好んで行きそうな「駿府城公園」を散歩することにしました。

カメラロールの一枚目も、外国人観光客が日本で見て驚くものによく選ばれるお城の石垣です。不規則な石をどうやって積み上げていたか、不思議に不思議だと考えたのでしょう。

天守に登って静岡市を眺めていこうと楽しみにしたところ、小さくも大きくもない碑が目に入りました。「あれ?址ってことは取り壊されて今はもうないってこと?」という不安を感じ、結果その通りでした。石垣しか残っていませんでした。

歴史上に何回かの失火ももちろん原因になりましたが、明治時代に維新の流れを受け、古くからあったお城は封建や保守の象徴として大事にされてこなかったのは大きいと考えられます。
今では力を入れて保護しているものは、時代を変えれば嫌がられるものにもなり、価値観は時代とともに変わっていくものだなと少し嘆きました。

そこで思い出したのは、先輩の永瀬から聞いたウイスキーのオールドボトルの話です。時代とともに、作り手のブレンダーさんが変わったり、使った麦やイーストが変わったり、買収によって出した商品のコンセプトがわかったりと、今見た景色も、そして出会って楽しんだお酒も一期一会なものになりえると儚く感じるものでした。

さらに繋がった話ではしごしていけば、同じ一日目で巡ったバーの中で、マッシュさんが個人的に一番印象的でした。オールドボトルが多数揃っていますので、帰り間際にマスターになぜこれほどオールドボトルがおいてあるのかと聞くと、彼はこう答えました。
「やっていくうちに、気づいたらみんなどんどんオールドボトルになっていくんですよ」と。

マッシュさんにおいてあるガイアフロー蒸溜所のウイスキーと古いポスターやオールドボトル。

その一言で、翌日に見学する予定の蒸留所も、この先様々な変革を迎え、今と歴史を作っていくだろうなと感心しました。今聞けるウイスキー作りのお話はきっと今しか聞けないものだと、そして自分の記憶の片隅でホコリを被り、いずれふとその存在に気づいた時がきたら、それはかけがえのないオールドボトルになったのかもしれないと、楽しみにしている気持ちもそこで増していただきました。

そしていざ本番、二日目の蒸留所見学へ。

バスで一時間ほど、街を抜け、山に入り、谷を通り、川を渡ると、蒸留所の大きな青い冷却水槽が輝いて、通ってきた村々と明らかに違う雰囲気で目に飛び込む。

丸太がたくさん積んである敷地の隣で、バスが停まり、降りると山を吹き回す風が木々の香りを運んできてくれる。桃源郷のようだ。

そして、予約の時間になり、木造の広い建物に入り、糖化槽の紹介からモルトミル、糖化、発酵、蒸留、熟成、一連の工程を紹介して頂きました。

モルトミル用の麦芽粉砕機と蒸留機一台は、ジャパニーズウイスキーが世界的に人気が急上昇する直前に、閉鎖となった軽井沢蒸溜所のものです。

軽井沢蒸溜所の麦芽粉砕機

経営悪化で蒸溜所が閉鎖されても、使われてきた機械が大事に残されて、また元とは違う場所で巡り会えるのは、僕の中でお城の天守と対照となって、今回の研修旅行で一番心に刻んだ思い出になりました。

時代屋オールドオーク川崎店 水上